真面目で面白い!!そして狂ってる。 葛飾北斎の違った一面を再認識できる【HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展】を僕の視点で紹介

葛飾北斎の展示

葛飾北斎、そう聞くと真っ先に思い浮かべるのは『富嶽三十六景|神奈川沖浪裏』ではないだろうか?彼が描いた富士の全46図の中の1つである。

日本を代表する絵の一つでもあり、テレビのドキュメンタリーなどでたまに特集が組まれたり、学校の授業や、デザイン史などで学ぶことはあったが、正直僕は葛飾北斎という人にスポットを当てて深く考えたことがなかったのだ。 

そして今回『HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展』へ足を運び、彼の奇想天外、破天荒、でもなぜか憎めない——絵筆だけでなく、性格・生き方・クセまでも“作品”として楽しめる展示を見に行き、ものすごく刺激を受けたので、北斎の“人間くささ”と会場の見どころを写真とともにご紹介していこうと思う。

ちなみに、今回の記事は真面目に書くと言うよりは僕の視点で面白おかしく会場内を観察しているので、是非日本画の固い先入観を捨てて読んでいただけると嬉しい。

身内にいたら多分嫌いだったかもしれない北斎

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展の北斎の人生イラスト図

こちらは、展示の最後の方で見られる「葛飾北斎」の画狂人生を楽しく解説してくれている絵図。
部屋が汚い・93回も引っ越す・名前を変えまくったなどなど、北斎がもし自分の身内だったら、本当に狂ったヤツだと思いきっと嫌いだったかもしれない(笑)ただ、展示を見た後は不思議と愛着しかなくなる面白い展示である。

では会場へ

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展 入り口看板

会場は東京駅の八重洲口から徒歩10分ほどの場所にある【CREATIVE MUSEUM TOKYO 】6Fで開催している。チケットは事前にネットから購入しておく必要があるが、会場に入るまでの間にQRコードを読み込んで決済することもできる。 とはいえ午前中に着いた僕らはそこまで待つこともなく20分ほどで会場に入れた。

今回の展示を楽しむポイント

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展 椿説弓張月の作品展示

今回の【ぜんぶ、北斎のしわざでした。展】は有名な『富嶽三十六景』ももちろん拝見できるのだが、それ以外の北斎が描いてきた図案やラフスケッチなどが漫画の技法をベースにして展示されているため、みなさんも馴染みのある点描・集中線・コマ割・流線などなど、日本の漫画表現の原点とも言える技法を北斎の絵を見ながら学んでいけるのも楽しい。

会場内は撮影OKな部分とNGな部分があるのだが、スマホでの写真撮影は映像以外ならほぼ可能だった。なんて太っ腹なんだろう....ただ、やはり展示会場で見る現物の迫力はなかなか写真ではお伝えできないのが残念だ。

会場に入ってすぐ、超大判印刷された北斎の作品が迎えてくれるのだが、すでにここから人だかりができていた。みなさん何に注目しているのかと思って並んでいると、大判印刷の下には作品の原本が展示されている...なるほどこれは見過ごせない...

写真のように製本された作品がキレイに展示されているのだが、とにかくその細かさに衝撃を受けた....これ版画なんだよな?.....絵はもちろん凄いのだが、これを彫った彫り師も文化勲章モノだと思った。

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展の北斎作品細かく彫られた文字

作品をマジマジと見ながら、この文字....なんで潰れずに転写できたんだろう...とか、、

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展の北斎作品光の美しい表現

光の表現方法が斬新で、これを版画にしたらいったいどうなっているんだろう.....とか考えながら勝手にコミック風効果音を頭の中で思い浮かべながら作品を見始めていた。

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展の北斎作品光の美しい表現2
HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展の北斎作品、爆発の表現
HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展の北斎作品雨の現

普通に今のコミック効果音と合わせてもなんら違和感がないところがまたすごい.....

ちなみに、僕の大好きな漫画家である水木しげる氏大友克洋氏の表現とも似ているため、きっと北斎の影響を少なからず受けているんだろうなとか、勝手に思っている。

随所の解説も要チェック

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展の解説ボード

今回の展示の面白みは、随所に出てくる解説にもある。 漫画の表現方法やデザインパターンやタイポグラフィまで、もはやただの絵師ではなくデザインにまで手を出していることが解説からもわかるようになっている。

ポイント1

『椿説弓張月』(ちんせつゆみはりづき)は勧善懲悪、奇想天外なストーリー。 今の漫画では普通ですが、集中線や効果線、枠線を飛び出す表現を次々と生み出し、見る者を魅了しました。これが200年前とは驚くばかり!

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展の椿説弓張月

ポイント2

お釈迦様の後頭部が光で輝いています。
光は姿かたちを表現するのが本来難しい現象ですが、北斎は点描で見事に表現しました。
中心から点が放射状に放たれるなど工夫がみられます。

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展のお釈迦様の後頭部の光を点描写で表現した作品

こんな感じで、作品と一緒に技法の解説をしてくれているので、より作品を楽しく知ることができる。

画本早引は今で言う「誰でも簡単に絵が描ける実用書」

もうこのタイトルからして斬新なタイポグラフィなのだが、当時門人(師匠の下で教えを受けている弟子)や工芸職人のために作った絵手本を再編集した江戸時代の実用書がこの北斎 画本早引である。 

例えば「め」というページを見ると「めのたま」とか、死後の世界のことをさす「冥途」などの絵が描かれている。 目の玉の妖怪らしきキャラクターは現代でも通用する可愛さだろう、ガチャガチャの景品なら間違いなく回している。

妖怪たちはまさに水木しげるの世界

会場の一角では、北斎が描いた“妖怪”たちがずらり。
その筆づかいはどこか水木しげるを思わせるユーモアと不気味さが同居している。

ただ怖いだけでなく、どこか人間味がにじむその表情。江戸の空想世界を描いたはずだと思うが、現代の漫画文化にも通じる生き生きとした妖怪たちに、北斎の想像力の深さを感じずにはいられない。

一筆画譜は「一筆書きの参考書」

たった一筆ですらすらと描いた、一筆書きのイラスト集は武士や町人・子供たち・風景・神様・動物などなど様々なものを一筆書きしている。 この流れるような曲線とバランスの取れた構図は、今のデザイナーも見習いたいバランス感覚の一つである。

森羅万象を描きつくした北斎の集大成『北斎漫画』

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展 北斎漫画が木箱に収められている様子

初編が刊行されてから15編で完結するまで64年を費やした、北斎のライフワークと言える『北斎漫画』は、図案集として現代でも通用する表現力で、動植物・人体のポーズ・各所風景・建築物・故事・伝説・自然現象などなど、とにかく見ていて飽きないコーナーである。

建物を描く際にコマ割からあえて飛び出して、建造物の大きさを表現しているのだそう...なるほど、これは今のマンガ表現でもよく使われている技法だ。

動植物を描いたページには、鯨やバク・象の姿があったのだが、これは北斎が中国やインドの画譜、または見聞きした情報を元にしたものであり、実際に観察して描かれたものではないとされているのだが、そこがまた奇妙さを感じる部分なのだろう。

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展 北斎漫画 変顔

ギャグセンの高い変顔やことわざをもじったような"粋"な表現は当時の江戸の庶民に笑いを届けた。こんな楽しい一面もあったのかと思うと、より葛飾北斎を好きになれる。

現代の小さな子供たちに葛飾北斎を知ってもらうなら絶対にこちらの作品を代表作にした方がいい気がする(笑)

北斎漫画を映像化したエリアも面白い

残念ながら映像エリアは撮影禁止だが、この踊独稽古 (おどり ひとりけいこ)などを連続したアニメーションで再現してくれているのを見ていると、本当に静止画だけではなく北斎はアニメーターにもなれたんじゃないかと思うほど人の動きをよく捉えている。

江戸時代にもあった恐怖の誤植

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展 誤植の展示

今も昔も変わらずデザイナーにとっては恐怖である印刷物"誤植"がこの時代にもあったんだよという展示。
左右で女性の部分の漢字が違っているのがおわかりいただけるだろうか? 原因が何にせよ大量に製本されてしまったあとだと思うと、職業柄震えが止まらない僕。

最後のエリアは『富嶽三十六景』を思う存分

最後は北斎が描いた富士『富嶽三十六景』特集で会場が締めくくられる。

この描かれた富士もみなさんの期待を良い意味で裏切る富士の描き方があるため、是非会場内で見つけて欲しい。

最後の「浮世絵のできるまで」もかなり興味深い

HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展 浮世絵ができるまで

ブログ冒頭でも紹介した「北斎の画狂人生絵図」とともに紹介されている、浮世絵ができるまでの解説マンガもかなり興味深いので是非見て欲しい。 僕らが小中学校で習った木版画の技法を改めてわかりやすく書いている。

北斎の作品を実際に見て欲しい

展示を見終えたとき、頭に浮かぶのは作品名ではなく“北斎という人間”そのものだった。


常に新しい表現を追い、90歳を過ぎても筆を握り続けた執念と情熱。
そのすべてが会場に息づいていた。
本展は、天才画家を神格化するのではなく、「描かずにはいられない人間・北斎」を体感させてくれる稀有な展示だった。

是非みなさんにも、北斎の違った一面を見に行っていただきたいと思うステキな展示だった。

開催概要

会期:2025.9.13(土)→11.30(日) 
   ※会期中、一部作品の展示替えを行います
開館時間:10:00-18:00
     ※毎週金・土曜および祝前日は20:00まで開館
     ※最終入場は閉館の30分前まで

会場:CREATIVE MUSEUM TOKYO[東京・京橋]
   東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 6F

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